だむだむ探検隊

bjリーグプレイオフ・最高の熱狂

前回の更新からずいぶん時間が経ってしまいました。申し訳ありません。今更ながら、bjリーグ1stシーズン・プレイオフの模様をお届けしたいと思います。
まず29日のセミファイナルから。試合内容は2試合とも素晴らしいゲームでした。大阪vs仙台は、アップセットを狙ったレギュラーシーズン4位の仙台が第3Qまで10点ビハインドとなんとか食らいつき、第4Qはアンドレ・ラリーの20得点等で怒涛の追い上げ! 残り9秒で上山博之の3ポイントが決まっていれば同点という、仙台にとっては実に惜しいゲームでした。
浜口炎ヘッドコーチは「最後は『ファウルゲームに行くならニュートンか波多野か城宝』とは指示したが、選手の判断に任せた」と語っていましたが、選手としてはこういう時は明確な指示が欲しいもの。案の定選手達は思い切ってファウルに行けず、行った時にはことごとく一番フリースローの上手いデイビッド・パルマー選手にボールが渡っていました。「パルマーにボールを持たせろ」としっかり指示していた天日謙作ヘッドコーチとの経験の差が出てしまった格好です。
しかし、「負けたのは僕の責任。選手達や、たくさん来てくれたブースターの皆さんに申し訳ない」とも語った浜口氏。良い経験を積み、これからに期待が持てます。
2試合目もレギュラーシーズン3位の東京が粘りました。とはいえ、前半で30-30というロースコアの展開は新潟ペース。東京らしからぬタフなディフェンスの結果とも言えますが、そのせいで後半は足が止まり、その間に体力には自信のある新潟が走り、また、12の10という驚異的な3ポイントで突き放して順当に勝利しました。
新潟にとってはラッキーな要素もいくつかありました。東京のスコアラー2人の得点が伸びなかったことや、「ミステリアス」(by廣瀬昌也ヘッドコーチ)な相手の選手起用です。特に、新潟というチームを知り尽くしている青木勇人のプレイタイムがわずか12分、シーズン後半スターターで使われていた勝又英樹に至ってはたったの3分。しかも、その短い時間で4得点をあげたにもかかわらず、あっさりと下げてしまいました。廣瀬氏でなくとも疑問に思うところです。

そして30日。3位決定戦で、再びジョー・ブライアントヘッドコーチのミステリアス采配が飛び出しました。チームで2番目にプレイタイムが少なかった信平和也をいきなりスターターに起用。さらに、日頃から「リーグで一番日本人を育てている」と誇らしげに話していたコーチが、この日に限って外国人3人をフル稼働。本人曰く「今日だけは勝ちにいった」ということですが、じゃあ前日の試合は勝ちにいかなくてよかったのか? ……やはり謎です。
それでも、この日は頼みのハンフリーが34得点と爆発し、勝ってしまうあたりが東京らしいと言うべきでしょうか。一方の仙台は、前半13点リードしながら逆転負け。とことん悔やまれるプレイオフになってしまいました。
残るは決勝戦。シーズンを通して外国人への依存度が高かった大阪ですが、シーズン後半に精彩を欠いていた波多野和也がこの日はオフェンスリバウンドに奮闘、ワイチを中心に猛烈に追い上げた新潟から流れを奪い返します。結果的に大阪の日本人の得点はこの日も一ケタ(波多野の6点のみ)でしたが、ここぞという時にリバウンドという外国人の得意分野で日本人が活躍し、チームを救ったわけです。廣瀬ヘッドコーチが警戒していたパルマーも得点を重ねる一方、新潟は前日絶好調だった3ポイントが33の8。最終スコアは74-64、大阪が初代王者の座につきました。
天日ヘッドコーチは常々「外国人に勝てなければ日本人のレベルは上がらない」と言っていました。つまり、外国人を上回るパフォーマンスを示せば試合に使うというわけです。それを今回、波多野選手は証明したのです。あとはそれを短期間限定ではなく継続できるかどうか。特に波多野選手の場合はそこが一番の課題なのですが(笑)。
ともかく、大阪の優勝はサラリーキャップ制などで戦力均衡を図っているbjとしては意味のあることかもしれません。なんせ、スーパーリーグ経験者を7人残した新潟を、選手を揃えてからまだ1年も経たない新規チームが破ったのですから。

プレイオフ全体を振り返ってみましょう。まず客入りですが、29日は約5400人、30日は約7600人。僕が知る限りでは、この数字は国内のバスケットの試合(NBAジャパンゲームを除く)では歴代2位と3位にあたる観客動員です。ちなみに1位は、田臥勇太がいた頃のウィンターカップ(約1万人)です。98年だったかな?
一発勝負のトーナメント、それも東京のホームコートである有明コロシアムでの開催という点は、発表された時点から論議の的でした。個人的な意見を言わせてもらうと、理想としてはやはりレギュラーシーズンの順位にしたがってホームコートアドバンテージがあり、勝ち上がるのに少なくとも3勝が必要という方式がベストだと思います。しかし、体育館のキャンセル等の問題で、これは実現するのに時間がかかりそう。今の段階では現行方式でもやむを得ないでしょう。
これに関して、28日の記者会見の時に河内敏光コミッショナーはこう言っていました。
「NCAAのファイナル4やユーロリーグのプレイオフは、一箇所に集めて爆発的に盛り上がる。同じように盛り上がるかどうか、やってみるのも面白いんじゃないかと思った。もちろん来年以降についてはより良い方法があるかどうかをまた考えていきます」
実際、この試みは成功でした。各チームのブースターが大挙押し寄せて熱烈に応援するというのは、なかなか見られるものではありません。これは意外な収穫というか、思わぬ成果でしたね。
各チームごとにブースターが大量にいるわけですから当然応援合戦となるのですが、社員を動員してシンセサイザーで大音量を垂れ流すJBLやWJBLとはもちろん違います。応援の基本は声だということをちゃんと心得ているのです。大阪ブースターが新潟にエールを送り、新潟ブースターがエールを返すという一幕もありました。新潟からバス5台、仙台から3台、大阪のブースターもかなりの数がゴール裏を占拠した中で、物凄い迫力だったのはやはり新潟。これはもうさすがとしか言いようがありません。
また、一箇所で一発勝負という方式のおかげで、29日の夜には新潟・仙台・大阪のブースターが一堂に会して交流を持とうという会も開かれました。参加者は小学生から50歳代まで総勢53人!! 島本さんと僕も参加しましたが、興味深かったのは島本さんを知らない人がいたこと。中には「月刊バスケットの元編集長ですよ」と教えても「そういう雑誌があるんですか」と言う人も。彼らは、地元にチームができて初めてバスケに興味を持ち、東京に遠征してくるまでになったのです。「bjは確実に底辺を広げてくれてるんだなぁ」と感じた次第です。
話を戻します。会場が有明というのも良かったのだと思います。なんとか6チームのホームゲームを全て見ることができましたが、有明はダントツにホーム色が薄い場所。プレイオフでも、ブースターの数は地元のはずの東京が一番少なかったくらいです。これが新潟の朱鷺メッセだったら、スタンドの90%以上はオレンジ色で染まったでしょう。
MCも含めて演出を上位チームに任せるなど、多少のアドバンテージがあったほうが良かったかもしれません。それでも、吊り下げ式スコアボードの上に大画面モニターをつけたり、プレイオフ用にチームごとにTシャツを販売したり、国家斉唱にアルフィーの高見沢俊彦を招いたり、というようにいろんな面でリーグの努力がうかがえて、イベントとして上質だったことは断言します。

課題はまだまだ少なくないbjリーグ。しかし、今後の発展を期待できるだけの成果が十分にあったということも間違いありません。
1年間の余韻に浸る間もなく、bjは既に2ndシーズンに向けて走り始めています。「シーズンが終わったら、何をすればいいんだろう」というブースターもいるようですが、オフシーズンに入ったからといって楽しみがなくなることはありません。ということで次回、トライアウトやドラフトの模様をお伝えします。


ファイブスターキャンプin狛江・バスケは楽しく!

島本和彦さんと岡山恭崇さんが主宰するファイブスターキャンプが、今年もヒステリアの拠点・狛江にやってきました。
2月19日午前9時、いつもH2B2でお世話になっている狛江市民体育館に、小学生から高校生までの「バスケがしたい!」男女35人が集結してのキャンプです。

午前中はファンダメンタル。フルコートが2面取れるスペースを4つに分け、各コート毎に専門のコーチを配置。3つのグループが一定の時間で移動しながら、それぞれシュート・ドリブル・リバウンドを教わるというローテーション形式です。
例えば、あるグループはまずAコートでリバウンドを教わり、次にBコートに移動してドリブルワーク、最後にCもしくはDコートでシュート練習。もちろんその間に別グループは隣のコートで他のスキルを教わっているわけで、最近は多くのクリニックで採用されている効率の良いやり方です。グループ分けは小学生・中学生・高校生の3つでした。
スキル別にコーチがついているので、練習方法もそれぞれに工夫が凝らされています。中でもリバウンドの部門は、2チームに分かれてサークルを囲み、その真ん中に置かれたボールを5秒間取られないようにスクリーンアウトするというものや、リバウンドを取ってシュートし、さらにルーズボールを取ってまたシュートといったものなど、あまり見られない練習方法を取り入れていました。僕が知らなかっただけなのかもしれませんが(爆)。

昼休みをはさんで、午後の部の最初はゲストが登場。前回のこのコーナーで紹介したストリートのプロ、Legendの選手達によるボールハンドリング講座です。
AJがメインコーチのような感じで進んだのですが、AJの進行はなかなか手慣れたものですね。喋り上手な人はついつい笑いを取ることに走りがちですが、彼は適度に参加者の笑いを誘いながらしっかりとドリブルの重要性を説いていました。参加者をノセるのもうまかったですね。
毎日指導する学校の監督やコーチはそういう方法を取るわけにはいかないと思いますが、クリニックの場ではこういった“子供達のやる気を起こさせる”方法が有効です。なおかつちゃんとポイントを突いた指導もしていたので、思わず筆者も「やるな、おぬし」と密かにつぶやいた次第です。
そうそう、参加者がLegendのプレイヤー達のデモンストレーションに驚嘆していたのは言うまでもありません。

Legendのメンバーが会場を後にすると、キャンプは1on1や3on3のゲームに移りました。その中で、1on1の高校女子部門決勝はかなりの激戦。白熱の勝負を制した女の子は、以前GYMRATSという団体のクリニックでも僕と顔を合わせたことがあり、相当な向上心の持ち主のようです。実力も既にかなりのもので、Legendのメンバーにも負けじとばかりに見事なドリブルを披露していました。
そして最後はシューティング大会。フリースローラインから順にシュートを打ち、決めた人は無条件で勝ち残り、外した人もリバウンドを拾って次の人が決めるまでに入れれば残れるというルールです。次の人に先に決められてしまうと周りから「See you!」と言われて脱落です。
3つのグループごとに優勝者を決めた後スタッフ部門も行われたのですが、島本さんに手招きされて急遽僕も参加。結果は……訊かないでください(泣)。ただ、「なんと彼はアメリカにバスケ留学して、帰ってきたばかりです!」と紹介されていた某若尾君が真っ先に脱落したのがせめてもの救いです(笑)。
午後のゲームの各部門優勝者に賞品が贈られ、また参加者全員に岡山さんから終了証が手渡されて、キャンプは無事おひらきとなりました。

終了後、参加者の一人である中村コウヘイ君に話を聞きました。今回は足の怪我のため見学となったものの、実に7年連続でこのキャンプに参加しており、島本さんが可愛がっている中学1年生です。そんな彼曰く「自分の知らなかったプレイを教えてもらえるので、このキャンプのおかげでうまくなってる実感があります」とのこと。怪我で参加できなかったことを非常に残念がっていたのが印象的です。
驚くべきは、既に170cmほどある有望な選手だというのに、将来の夢はなんと学者! 一見もったいない話ですが、それまではバスケを一生懸命頑張って、大人になったら楽しくバスケをやりたいそうです。そう、バスケは楽しむことが何よりも大事。そういう意味では、まさに彼のような選手のためにこのキャンプがあると言ってもいいでしょう。
バスケの基本は楽しむこと……あらためてそのことを子供達に教えられた、そんなキャンプでした。


Legend・歴史の第一歩

昨年、日本には2つのプロバスケリーグが誕生しました。一つは既にここでも何度も紹介しているbjリーグ。そしてもう一つがストリートリーグ・Legendです。
日を追うごとに市場を拡大し、すっかり市民権を得たストリートカルチャー。その中で、ここ数年ストリートバスケも少しずつ動きを見せてきてはいました。「FAR EAST BALLERS」が先駆けとなり、それに続く人達も現れてきていたのです。代々木公園に作られたコートでは「ALLDAY」というトーナメントゲームも定期的に開催されるようになり、ますますその熱は高まる一方でした。
そこに目をつけたのがヒステリアのメンバーでもある金井真澄氏。地道に、しかし大きな志を抱いて活動する彼らに可能性を感じた氏は、某大手企業を退職し新会社「FROM THE STREET」を設立、プロのストリートリーグを立ち上げました。大変な英断です。
10月末に行われた結成披露パーティーには島本さんや河内敏光bjリーグコミッショナーも駆けつけるなど、バスケ関係者の注目を集めました。
その記念すべき1stシーズンの優勝者が、2月12日のグランドチャンピオンシップで決定。そんなわけで、その2月12日の様子を報告したいと思います。ただ、Legend公式HP(http://www.streetlegend.jp/)に詳しいレポートが既に出ているので、ここでは僕なりの視点で書いてみることにしました。

僕が会場入りしたのは開始10分前でした。その会場というのは、新木場駅からほど近い所にあるライブスペース。ストリートというと野外を想像しますが、Legendは場所を選びません。型にはまらない、固定観念にとらわれないというのが売りというか、Legendらしさというべきでしょうか。
それはともかく、中に入ってビックリしました。予想していたよりも大きい会場だったのに超満員なのです!「これは1000人いってるかも」と思ったら、後で聞いたところやはり1000人入っていたとのこと。前売券が早い段階で売り切れていたので、そんなに大きな会場ではないのかと思っていたのですが……Legend恐るべし。
東京アパッチのホームゲームの時にも有明コロシアム前の野外スペースでリーグ戦が行われていましたが、その時はだいたい50人程度。それでも「思ったより多いし、結構盛り上がってるなぁ」と思ったものですが、グランドチャンピオンシップとはいえ1000人というのは十分な集客力です。 ちなみに、観客席はコートを取り囲むように設定されていて、ボールはもちろんのことルーズボールを追った選手も容赦なく飛び込んできます。それだけに、観客はコートから目を離すわけにはいかないし、しっかり見られているとなればプレイヤーも手抜きはできません。また、お互いを身近に感じることもできるので、これは良いことです。と、思わず断言してしまいます。

ほどなくしてイベント開始。legendには必ずMCがいて、盛んに観衆を煽ります。時には試合中のコートに割って入ることも。この日は2人体制で、トークのかけあいもなかなか面白かったですね。
プレイヤーも負けていません。リーグ推薦ボーラーとして登場したぬま・仮エースの2人は、参加ボーラー紹介時は亀仙人Tシャツ、試合前の入場時は大仏マスクを着用して現れました。他にも福岡土産を観衆に配りだす選手がいたり、見る者を惹きつけるパフォーマンスが良いですね。
肝心のゲームも、見る者を「アッ!」と言わせるプレイが随所に出ました。刺客ボーラーの一休に「大したことない」と挑発されたTANAは、相手のウェアを脱がせて抜き去るというストリートならではのスーパープレイを披露。試合後に「とんちだけだった」というコメントを残し、場内を大いに沸かせました。
こんなパフォーマンス満載でも、Legendはあくまで真剣勝負。青山学院大出身のクリスや日本体育大出身のFUJI(藤田浩二)らは高いスキルを存分に発揮し、その他のプレイヤーも勝負にこだわる姿勢を見せました。敗者復活戦をはじめ、多くのゲームが激戦でした。

ところで、この日僕が一番注目していたのは、準決勝の前に行われたスペシャルエキシビジョンでした。車椅子バスケの安直樹選手(アテネパラリンピック代表)が健常者に混じってプレイするのです。人気漫画「リアル」でそういうシーンがありましたが、その再現というわけです。
前述のぬまと仮エースが在籍する勉族のメンバーをまじえてのゲームでしたが、ピック&ロールから安選手がレイアップを決めた時は場内がどよめきました。安選手の器用な車椅子さばきやボールの扱い方、3ポイントも打てることに驚いた人が多かったようです。車椅子バスケもちょくちょく見ている筆者としては、こういった企画が今後増えていってバスケ界全体が盛り上がってほしいと願うばかりです。

今回のグランドチャンピオンシップはLegendの今後の発展を十分に予感させるものでした。期待の意味も込めて、今回のイベントで気になった点を一つだけ挙げておきます。
それは、休憩時間がないこと。イベント全体の時間が長いのはあらかじめわかっていることですから、どこかで一息入れる時間が必要です。見る側としては喉も渇くし、トイレにも行きたいし、グッズもじっくり選んで買いたいし……となるはずです。それに、疲れてくると見ることに集中できなくなります。立ち見席でも結構な額のお金を取っているのですから、余計にこういう配慮は欠かさないでほしいですね。
bj同様Legendもプロ、ファンあってのリーグです。「ダンクは4点」等の競技ルールもエキサイティングで魅せるバスケを志向していて良いところですが、競技以外の部分についてもお客さんを満足させるリーグであってほしいと思います。

あっと言う間に1stシーズンが終わったLegend、3月11日には早くも2ndシーズンが始まります。通常のリーグ戦は無料で観戦できることが多いので、一度その熱を感じに行ってみてはどうですか?


bjリーグ1次トライアウト・バスケがしたい人達

日本初のプロ・bjリーグは現在、記念すべき1stシーズンのほぼ折り返し地点。そのさなか、昨年に続く2回目のリーグ合同トライアウトが実施されました。
最初に触れておきたいのは、昨年からの変更点がいくつかあること。まず、会場が千葉県船橋市の一箇所のみとなりました。昨年は関西でも行われただけに特に西日本の人は大変だと感じるでしょうが、本気でプロになりたいかどうかを試すという意味では良いことです。
さらに、昨年は午前の体力テストとスキルテストでふるい落としてから午後にスクリメージという形でしたが、今回は参加者を2日間の午前と午後、各3グループの計12グループに振り分ける形になりました。
ただ、そのグループ分けの時点で選手個々のレベルが考慮されていたようで、大学等で実績のある選手は27日の午前Aコートに集中していました。これは、取材側に対する配慮という意味合いもあったように思われます。
というのもメディアの取材が許可されたのが27日のみだったからなのですが、僕は26日もちゃっかり一般見学者として見てきました。そこでこのだむだむ探検隊、26日・27日午前・27日午後の3つにわけて、それぞれの様子をレポートすることにします。

☆26日
この日集まったのは、サイズ的にも小さく実績もないであろう人ばかり。bjではガードにならざるを得ませんが、そのことを理解した上でプレイするどころか、スキル自体がおしなべて不足しているように感じました。
ちょっとキツイ言い方になってしまいますが、「ただバスケしに来た」という感じの人がほとんど。プロ選手と自分のレベルの差が把握できていないのかもしれません。
とはいえ、中には終了後にコーチ陣にアドバイスを求めにいく向上心のある選手もいました。H2B2の常連・村山君もその一人。彼曰く「正直レベルは低かったのに、それでも全然ダメだったのが悔しい。でも、良い経験をしました」。彼のような選手が今後成長してプロのレベルに達するかどうか、期待して見ていきたいところです。
余談ですが、見ていて面白かったのが新潟A2の下地一明コーチ。選手のチェックやテストの説明のために各チームのコーチが配されているのですが、下地コーチはことあるごとに選手を集合させてはダメ出し、ある時は「返事は? 声が小さい!!」とほとんど体育の先生状態(爆)。
新潟A2での日頃の鬼コーチぶりをここでも発揮。彼だけは、半ば指導しに来たような感じです。実績のある選手が集まる翌日も同じ調子でした(笑)。

☆27日午前
ここには前述の通り有力選手が集まるとあって、僕も意気込んで1時間も前に体育館に到着。見たことのある顔も既にたくさん並んでいます。福岡第一高のセネガル人2人や石橋貴俊はさすがにデカイ(汗)。
とりあえず2階のプレス席で見てみようと階段を上がると、ほとんどのマスコミが撮影のためにフロアに降りていて、最初は僕だけがポツンと一人きり。ちょっと寂しさを感じていたら、次にプレス席に姿を現したのがなんと河内敏光コミッショナー。しかも僕のすぐ横に腰をおろしたのです。
ともに最初はじっとコートに視線を送っていました。それが5分もすると河内コミッショナーが「あの22番はどこから来たの?」「6番の韓国人はいいねぇ」といった具合に、矢継ぎ早に話しかけてきました。(※筆者は6年近く前から面識があり、いろいろお世話になっています)
ある程度の選手に関しては予備知識があったようですが、取材陣に配られた選手リストをどうやら持っていなかったらしく、目についた選手はその都度僕に確認していました。Aコートの選手に関しては、一人ひとり細かい部分までしっかりと見ている様子。
と思ったら今度は「黄色の9番もなかなかいいよ」と、いきなり隣のBコートの選手の話が!! さすが元全日本のガード、視野の広さは抜群です(笑)。
B・Cコートにも名前を聞いたことのある選手がちらほらといましたが、Aコートはやはり別格といった感じで、早くも関係者に声をかけられていた選手もいた様子。ここの約30人はほぼ全員が2次に進むものと思われます。

☆27日午後
有力選手は午前のAコートに集中しましたが、最もメディアの注目を浴びたのはこのグループのAコートでした。元福岡レッドファルコンズの庄司和広・上山博之両選手が参加したからです。
1月19日にチームのJBL脱退が決定してから、わずか8日。まだその衝撃が覚めやらぬ状態とあって、両選手は会場入りして間もなく多くの報道陣に囲まれました。福岡からは午前にも3選手が参加していましたが、JBLでの実績もある庄司と上山の参加はやはりちょっとした一大事というわけです。
多くの視線が注がれる中、2人のプレイ自体はかなり抑えめ。それでも、新制度により2月以降の試合にすぐ出場可能とあって、当然のように各チームのスタッフはその場で検討に入ったようです。大分の関係者として来場していた我らが島本さんも上山に高評価。ま、この2人は今更見るまでもないですよね。
結果、上山は師弟関係にある浜口炎ヘッドコーチ率いる仙台と、庄司は地元・埼玉と契約。2人のbjデビュー戦は奇しくもその2チームの激突でしたが、ともあれ再びコートに立つことができたのは本人にとってもファンにとっても何よりです。
最後に全体について触れておきましょう。Aコートは、ネームバリュー的には午前Aコートに次ぐ位置づけではあったものの、やや荒っぽくて正確性に欠ける印象。89人という全体の合格者数を考えると20人ほどが通過していそうですが、数人を除いては2次で相当頑張らないと厳しい感じです。

ざっと振り返ってみるだけのつもりが、結構長めのレポートになってしまいました。それだけ見所満載だったということであり、実際ここに書きたいことは他にもたくさんありました。ある選手が頭をコーンロウにしていたとか、体育館が寒すぎたとか(爆)。
トライアウトはまだ終わりではありません。5月の2次(最終)トライアウトが残っていますし、今回合格できなかった選手にとってもまだ来年以降も挑戦の場があるわけです。
とりあえず見る側としては5月が待ち遠しいですね。あと3カ月、長いようですが、bjのシーズンはその直前まであるので意外と早いかも?


オールジャパン・強者の意地

新春特別2本立ての2発目は、正月ということでオールジャパンです。筆者はここ5年、正月は必ず東京体育館と代々木で過ごしています。といっても、体育館に寝泊まりしているわけではもちろんありません。
当然のように今年も行ってまいりました。よほどのことがない限り、正月はこういう過ごし方を毎年繰り返していくでしょうね。「正月休み」という言葉が僕の辞書に復活する日は来るのでしょうか。

それはさておき、オールジャパンというと、JBLやWJBLに加えてインカレでベスト8に残った大学、地方ブロックを勝ち上がったクラブチーム等が一堂に会する大会。
東京体育館の4面と代々木第2体育館で同時に進行するのは利点でもあり難点でもありますが、ともかくそれだけ様々なカテゴリーのチームが集まるとなると、やはり期待するのはアップセット(番狂わせ)。特にJBLは外国人が出場できないとあってアップセットの期待も高まるというものですが、男子の場合ここ数年はJBL2部にあたる日本リーグ勢が大学勢にいいようにやられていて、もはやアップセットとは言えなくなってきた感があります。傾向としてはリーグ戦での外国人への依存度が高いチームが弱く、インカレ7位の日本大に敗れた豊田通商がいい例です。
スーパーリーグの各チームも、安穏とはしていられない状況です。優勝した東芝や準優勝の三菱電機でさえ、最後には地力を見せつけたものの大学勢に結構苦戦しました。リーグ前半戦を終えてから準備期間が少ないとはいえ、選手個々の力量を考えるともう少し相手を圧倒してもよさそうなもの。いかに普段外国人に頼っているかを証明していると言わざるを得ません。
ただ、JBLの外国人選手を排除している最大の理由「日本人センターの育成」という部分に関しては、ある程度その効果が出ているようにも思います。トヨタ自動車の2mプレイヤー・山田大治はリーグ戦に比べて出場時間が倍増、ダンクに3ポイントにと大活躍して大会ベスト5に選ばれました。同じくベスト5の三菱電機・鵜澤潤、松下電器・青野文彦、東芝・宋燕忻らもフル稼働してしっかり結果を残しています。どのチームも外国人次第になってしまっているスーパーリーグのあり方を考え直す必要があるかもしれません。
その他男子では、京都産業大と富山グラウジーズの対戦を見ることができなかったのが僕としては心残りです。富山が来季からbjリーグに参加するからというわけではなく、215cmの菅谷徹と210cmの石橋貴俊のマッチアップを見たかったのですが……ご覧になった方、感想を聞かせてください(泣)。

女子に目を移すと、東京海上日動をあと一歩まで追い詰めた立命館大や、三菱電機と前半をほぼ互角に戦った松蔭大の健闘が光った程度で、ほぼ順当な結果。大学勢はW1リーグ勢の壁を破れず、そのW1リーグで早々に優勝を決めたアイシンAWも2回戦で日本航空に屈しました。
そんな中、準決勝の2試合と決勝はかなりの接戦で盛り上がりました。その混戦を制したのは富士通。リーグ戦の優勝も未経験なので、初めての日本一です。
決勝の相手はシャンソン化粧品だったわけですが、中川文一ヘッドコーチは元シャンソン、シャンソンの李玉慈ヘッドコーチは元富士通という因縁の対決でした。そのせいか李HCはやりにくい面があったかもしれませんが、一方の中川HCは「対戦する相手に富士通のバスケットをぶつけていこうと、それだけだった」と優勝会見で語ったとおり、思い切りよく采配を振るっていたように感じました。後半のマッチアップゾーンの採用や、畑恵里子の起用がズバリ的中。さすが、かつてシャンソンを10連覇に導いただけのことはあります。
その中川HC、優勝会見ではこうも言っていました。
「あと何年かして総合力という意味での体力がつけば、シャンソンに勝って優勝も狙えると思っていた。でも、まさか今年勝てるとは思っていなかったんですけどね」
少し謙遜してみせたとはいえ、やはり古巣に対して「負けられない」という思いは強かったのでしょう。マッチアップゾーンという、前日まで使わなかった秘策をいきなり出してきた点を考えても、「負けてもともと」などという気持ちはさらさらなかったような気がしてなりません。V10の功労者でありながら追われるようにシャンソンを去った中川HCが、プライドをかけて戦いリベンジを果たした……僕はそんな見方をしています。

終わってみれば、男子の東芝・女子の富士通と、ともに川崎市に拠点のあるチームの優勝となりました。そういえば、スーパーリーグ・Wリーグ以外で唯一ベスト8入りの専修大も川崎。でも、これで川崎が盛り上がるかというとそんなことは全くないというのが、「なんだかなぁ」という感じですけどね。
最後に一つ。今バスケ界を騒がせている福岡レッドファルコンズはどうにかこの大会に出場でき、やや苦しみながらも慶應義塾大を破ってようやく公式戦初勝利を挙げました。選手達が交通費や宿泊費の一部を自ら負担しなければならないにもかかわらず、それでも彼らは「バスケがしたい」(どこかで聞いたことのあるセリフですが)と思っています。コートに立てることがどれほど素晴らしいことか、今の彼らは痛切に感じているはずです。
僕は一バスケファンとして、そんな彼らを応援したいと思っています。