新春特別2本立ての2発目は、正月ということでオールジャパンです。筆者はここ5年、正月は必ず東京体育館と代々木で過ごしています。といっても、体育館に寝泊まりしているわけではもちろんありません。
当然のように今年も行ってまいりました。よほどのことがない限り、正月はこういう過ごし方を毎年繰り返していくでしょうね。「正月休み」という言葉が僕の辞書に復活する日は来るのでしょうか。

それはさておき、オールジャパンというと、JBLやWJBLに加えてインカレでベスト8に残った大学、地方ブロックを勝ち上がったクラブチーム等が一堂に会する大会。
東京体育館の4面と代々木第2体育館で同時に進行するのは利点でもあり難点でもありますが、ともかくそれだけ様々なカテゴリーのチームが集まるとなると、やはり期待するのはアップセット(番狂わせ)。特にJBLは外国人が出場できないとあってアップセットの期待も高まるというものですが、男子の場合ここ数年はJBL2部にあたる日本リーグ勢が大学勢にいいようにやられていて、もはやアップセットとは言えなくなってきた感があります。傾向としてはリーグ戦での外国人への依存度が高いチームが弱く、インカレ7位の日本大に敗れた豊田通商がいい例です。
スーパーリーグの各チームも、安穏とはしていられない状況です。優勝した東芝や準優勝の三菱電機でさえ、最後には地力を見せつけたものの大学勢に結構苦戦しました。リーグ前半戦を終えてから準備期間が少ないとはいえ、選手個々の力量を考えるともう少し相手を圧倒してもよさそうなもの。いかに普段外国人に頼っているかを証明していると言わざるを得ません。
ただ、JBLの外国人選手を排除している最大の理由「日本人センターの育成」という部分に関しては、ある程度その効果が出ているようにも思います。トヨタ自動車の2mプレイヤー・山田大治はリーグ戦に比べて出場時間が倍増、ダンクに3ポイントにと大活躍して大会ベスト5に選ばれました。同じくベスト5の三菱電機・鵜澤潤、松下電器・青野文彦、東芝・宋燕忻らもフル稼働してしっかり結果を残しています。どのチームも外国人次第になってしまっているスーパーリーグのあり方を考え直す必要があるかもしれません。
その他男子では、京都産業大と富山グラウジーズの対戦を見ることができなかったのが僕としては心残りです。富山が来季からbjリーグに参加するからというわけではなく、215cmの菅谷徹と210cmの石橋貴俊のマッチアップを見たかったのですが……ご覧になった方、感想を聞かせてください(泣)。

女子に目を移すと、東京海上日動をあと一歩まで追い詰めた立命館大や、三菱電機と前半をほぼ互角に戦った松蔭大の健闘が光った程度で、ほぼ順当な結果。大学勢はW1リーグ勢の壁を破れず、そのW1リーグで早々に優勝を決めたアイシンAWも2回戦で日本航空に屈しました。
そんな中、準決勝の2試合と決勝はかなりの接戦で盛り上がりました。その混戦を制したのは富士通。リーグ戦の優勝も未経験なので、初めての日本一です。
決勝の相手はシャンソン化粧品だったわけですが、中川文一ヘッドコーチは元シャンソン、シャンソンの李玉慈ヘッドコーチは元富士通という因縁の対決でした。そのせいか李HCはやりにくい面があったかもしれませんが、一方の中川HCは「対戦する相手に富士通のバスケットをぶつけていこうと、それだけだった」と優勝会見で語ったとおり、思い切りよく采配を振るっていたように感じました。後半のマッチアップゾーンの採用や、畑恵里子の起用がズバリ的中。さすが、かつてシャンソンを10連覇に導いただけのことはあります。
その中川HC、優勝会見ではこうも言っていました。
「あと何年かして総合力という意味での体力がつけば、シャンソンに勝って優勝も狙えると思っていた。でも、まさか今年勝てるとは思っていなかったんですけどね」
少し謙遜してみせたとはいえ、やはり古巣に対して「負けられない」という思いは強かったのでしょう。マッチアップゾーンという、前日まで使わなかった秘策をいきなり出してきた点を考えても、「負けてもともと」などという気持ちはさらさらなかったような気がしてなりません。V10の功労者でありながら追われるようにシャンソンを去った中川HCが、プライドをかけて戦いリベンジを果たした……僕はそんな見方をしています。

終わってみれば、男子の東芝・女子の富士通と、ともに川崎市に拠点のあるチームの優勝となりました。そういえば、スーパーリーグ・Wリーグ以外で唯一ベスト8入りの専修大も川崎。でも、これで川崎が盛り上がるかというとそんなことは全くないというのが、「なんだかなぁ」という感じですけどね。
最後に一つ。今バスケ界を騒がせている福岡レッドファルコンズはどうにかこの大会に出場でき、やや苦しみながらも慶應義塾大を破ってようやく公式戦初勝利を挙げました。選手達が交通費や宿泊費の一部を自ら負担しなければならないにもかかわらず、それでも彼らは「バスケがしたい」(どこかで聞いたことのあるセリフですが)と思っています。コートに立てることがどれほど素晴らしいことか、今の彼らは痛切に感じているはずです。
僕は一バスケファンとして、そんな彼らを応援したいと思っています。