2001年の冬のことです。
 17、8年振りにスキーをしたのです。(真夏になろうというときに変な出だしになってしまいましたが)土、日とフルに滑りました。スキーの板そのものの素材の進歩と、かなり短いのが主流になっていたので、よく滑るは、曲がるはで、嬉しくなって我を忘れて滑ってしまったのがいけなかったようです(?)。
 まだ、55歳前だったし、その後、東京に帰ってきてからも月曜に2時間、水曜に2時間テニスをしました。水曜の最後のゲームのときにそれは起こったのです。左足首にボールをぶつけられたか、思い切り蹴っ飛ばされたようなショックでひっくりかえりました。立とうとしても全然駄目。アキレス腱の完全断裂でした。
 まるっきり痛くはないし、不思議な感じでした。今までず~っとスポーツはやってきましたが、致命的な怪我は一度もなかったし、対応はどうしたものかと苦慮したものです。ただ、断裂の理由はしっかりと把握しておきたかったのでつらつら考えました。下半身の使い過ぎで疲労が蓄積していたようです。そこに帰結いたしました。4日間のスポーツには、さすがに身体が悲鳴を上げたのだと思います。今、考えればです。

 こういう時はタイミングが合わぬもので、水曜日に断裂、木曜日に大学病院へ行きましたが、診察はしてくれて手術をすると決まったものの、翌週の水曜が手術日ということで1週間待ちということに…。命に別状のない外科治療的なものはあっさりと決められてしまいました。
 全力で突っ張りつつ、突っ走って来たので、神様が休めと指令を出したのだと思います。
 で、入院ということになるのですが、ベッドも空いていないので日曜日にとなりました。仕事の段取りと、時間を有効に使うにはどうするか? ということを週末に考えた訳であります。身の回りの? 整理をしてみると、時間がなくて読めずにいた硬めの書籍がたくさんあるのが判明しましたので、それをすべて読破する生活にしようと考えたのです。20冊くらいはありました。
 術後は時間だけはたっぷりとあります。ボクの身体が持っている自然治癒力に後は任す以外方法はないと担当ドクターに言われましたしね。手術の翌日まではかなり痛かったのですが、それ以降、ひたすら傷口がふさがるのを待つことになりました。
 そこで夜寝る前に読み、朝起きては読み、昼寝の後また読みで、3週間の入院でお見舞いに貰った本を含めると50冊は読んだのではないかと記憶しています。バスケットボールを生業(なりわい)としている関係から、アフリカン・アメリカン(黒人)に関する本をかなり集中して読み漁りました。中で一番印象に残ったのがアーサー・へイリー著の“Roots(ルーツ)”でした。

現在、NBAで活躍している選手の85%はアフリカン・アメリカンの先祖がどのようにアフリカから連れてこられたのか? また、どんな苦労をしてきたのか? どのように自由を勝ち取ってきたのか? が劇的に描かれている名作でした。この“Roots”を読む前と、読んだ後では、自分の中で何かが変わったように感じています。TVで話をする時も慎重に話すようになりました。
その後、病院でベッドに横たわっている時にも常に、いろいろな選手を取材した時の返ってきた言葉が脳裏に浮ぶようになりました。そして、最後には、ボクのRootsは? という所に考えが行くようになっていったのです。ボクの父も、ボクも東京生まれの東京育ちです。しかし祖父は四国の高知県から出て来たと聞いています。それまでも、ごく軽い気持ちでいつかRootsの地を訪ねてみたいと思いはしましたが、現実のものにはなりませんでした。この時、絶対に行かねばならんと決心したのを覚えています。
 
そして、先日6月2日から4日までついに「Rootsを辿る旅」が実現したのです。
 人生の暦が一回りした3度目の成人式の歳にです。
 前置きが長くなりましたが、次回の“なんトラ”にその旅の模様をお伝えしたいと思います。自分なりの決算の旅でした。
 それでは次回の“なんトラ”までSee You!!