世の中これだけ最悪の状態だ、100年に一度の不景気だ、などとすべてのマスコミが揃って言っているとあらゆるものの動きが悪くなりますな。われわれ日常の生活でも動くのもかったるくなります。でも歴史上、何時の時代をどのように見ても、すべてが悪くて良いところがひとつもないなんてことはありません。
 必ず表があれば裏があるし、損するところがあれば得するところもある。それが家庭という最小単位から国、地球規模まで広がっても同様だと思うのです。大きな視点から見ればバランスは取れているのですね。だけれど、当事者は目の前のことで精一杯ですから大変さを一生懸命に言おうとするから、それを取材するマスコミ、とくにメディアに関わる人々はおおむねネガティブな人種ですからあまり明るい面を取り上げません。そんな習慣はありませんからドツボにはまって行くのでしょう。

 そんななかで普段のうっぷんやストレス、悩みを確実に吹っ飛ばしてくれるのがスポーツです。うっぷん、ストレス、悩みなどの詰まった状態を解決するのにとる方法のひとつにお酒があります。が、お酒は吹っ飛ばしてはくれません、気が大きくなれるものを呑むのですから最後は荒れることは多いし、あくる朝には地獄が待っています。さらに反省の悩みならぬ波が襲ってきます。
 唯一の解決法と言っていいのが体を動かすこと。体をうごかすこと、その一点に集中するので一時的に日常から離れられるわけです。ボクは雑誌の編集者時代はとくにそんな時間を作るのに腐心していたことを思い出します。そうでないとリカバリーできないほどの長時間労働です。長く働きたいからではなく、それぞれの専門分野がはっきりしているため助力を求めようにも求められない現実なのです。今の言葉で言えばマンパワーがないということです。ですから……ざるを得ない、ということになる訳です。嫌いではないから続けられるということも言えますが…。ゆえに忙しいときほど運動する時間を必死になって見出そうとしました。

 運動が、体を動かすのが得意ではない人は観戦ということになろうかと思います。そこで大声を出すのも一種のスポーツ、運動です。これもいい。
今回のWBCは不景気で体が固まっていた人々を解きほぐすのに大きな効果があったのではないかと思います。人々だけではなく日本全体の雰囲気が明るくなったような気もします。
 決勝の延長10回、あの時のイチローの眼、痺れました。久しぶりにどこかで見た、de ja vu(既視感)のような気がします。そして試合後の談話も気が利いていました。
 「あの時は、神が降りてきましたね…」
 どっかで聞いた返答です。NBAファンの、マイケル・ジョーダンファンのイチローならではの言葉でしょう。かなりMJ関連の本を読んでいるとみます。
 彼のレベルだとなにかにつけ談話を求められるのが常なので、すぐパッと思いつくのでしょうね。いつも考えているから出てくるのです。ですから記者やアナウンサーがつまらない、何も考えていない質問をすると「むっと」した返答が帰ってきます。
 その世界を知らない人からすると誤解を受けそうな返答ですが、真剣に道を追い求め、その後の談話まで考えている人からすればそんな反応もしてしまうでしょう。
良く質問されるスポーツ選手の返答にあるのがまず、「そうですね。」というのを枕につける人が多いのです。毎回、毎回、質問されるたびにです。
 少しは聞く者の身にもなって欲しいと思うことも多々あります。これはインタビューアーにではなく、その後ろに控えている映像を視る視聴者の身ということです。
 ですから、イチローの談話はボクを飽きさせないし、好きなんです。
 前回のWBC、今回のWBCと、MLBでプレイしている時とは違う弾(はじ)けたイチローを見ているとますますそう思う自分がいます。

 それでは次回の“なんトラ”までSEE YOU!