ここのところ読書にいそしんでおります。
 と言いますのは前々から読んでみたいと思っておりました塩野七生(しおの・ななみ)さんの“ローマ人の物語”と言う大著が文庫本化され、たいへん読みやすくなったと聞いていたからです。それを手に入れ“はまる”といった感じで読みふけっているのです。
 とは言いましてもなんやかやとやることが山積みされていますので、電車の中でとか、どうしてもベッドにひっくり返って寝る前に、というのが多いのでなかなか進みません。そんな状態で読む場合には1992年から2006年まで毎年1巻ずつ発行していた15巻に及ぶハードカバーでは重くてとてもたまらんということで文庫本にしたわけです。しかしながら、文庫は1巻について2~4冊に分かれており2008年9月現在で34巻が刊行されていますので読み終わるのはいつになるやら、毎日少しずつ、少しずつというところであります。

 ところがこの本、歴史書ではないと著者が言っているごとく、小説のような感じで読めますのでどんどん引き込まれていきます。そして紀元前、つまりキリストが生まれる前のローマの政治体制なども詳しく述べられていて本当に勉強になるところがたくさんあります。なかでも、私がびっくりしたと同時に感動したのは、次のようなことが書かれていたところなのです。
 BC242年、カルタゴとの戦役でローマの国庫は空も同然だった。しかし、元老院(最高地位)は増税が最高の策とは考えなかった。同盟都市にも戦費の負担求めることも考えなかった。元老院は戦時国債を発行することにした。戦争終結後の支払い可能になった時点で返済するという条件付きでの購入を求められたのはローマ市民全員ではなく、義務付けられたのは有産階級(大金持ち)と政府の要職(こちらも同様です)にある人たちだけだったのである。
 と、これを読んだとき一体今の日本はどうなっているんだ? と思ったのです。2500年くらいも前に生活していた人々がこんな考えを持っていたなんて驚きです。現代の日本の有産階級や政府の要職に付いている方々は自分たちの置かれている立場をまるっきり、お分かりになられていないようです。ここを呼んだときから読むスピードが一段とアップしたものです。
 持てる者や国のリーダーたちが必死になって現状を打開すれば、自分たちの購入した国債もすぐ返ってくるのですからがんばるのでしょう。決して他人事のような感覚では捕らえていないと思われます。酔っ払っている時? ではないということが分かっているのですね。

 こんなことを教えてくれるのが読書です。“ローマ人の物語”を読もうと思ったきっかけは大学時代の恩師から「ギボンの“ローマ帝国衰亡史”くらいは読んでおいたほうがいいよ。これまでも、これからもヨーロッパ、アメリカ中心で世界は動くだろうから大まかにでも掴んでおけば起こった事象や考え方が理解できるだろうから…」というものでした。社会人になったばかりでしたが初給料で文庫本10巻を大人買いしました。そのころはまだこんな表現はなかったでしょうけれど、「よしっ、読むぞ!」という決意でスタートしました。
 ところが1週間も読むうちに何がなんだか分からなくなり、見事、挫折。
 高校時代に世界史をとっていなかったひとですから、先生の言う大まかにでもという以前の状態でしたし、出てくる名前が多くて訳が分からなくなったというのが本音です。
でも、その後40年ほどの人生経験と(大したものではありませんが)、馬齢を重ねた結果、リベンジということになったのです。まずは読みやすくなったものでトライということです。
希代の京料理家の西音松(にし・おとまつ)さんが息子さんの健一郎さんにことあるごとに語っていた「死ぬまで勉強」ということに習いたいというところです。まだまだ先は長いけど、ギボンまで届くかどうか? しぶとく行きたいと思っています。

それでは次回の“なんトラ”までSEE YOU!