この時期のバスケ界のビッグイベントといえば、何といってもインカレです。
学生日本一を決めるこの大会は、ここ数年は特にかなりの盛り上がりを見せています。慶應義塾大の45年ぶりの優勝に沸いた昨年の最終日は、入場制限のために会場に入ることすらできずに泣く泣く帰った人もかなりいたと聞きます。
僕は、去年の最終日は別の取材で見ることができなかったのですが、その前日は確かに超満員でした。年々観客が増えているのではないでしょうか? スーパーリーグのファイナルよりは確実に多いはずです。
そんなわけで、今年も14(水)~16(金)の3日間、体育館に足を運んできました。
女子2回戦が行われた14日の横浜文化体育館は、注目カードが目白押しでした。松蔭大―早稲田大、専修大―立命館大、筑波大―白鴎大など、2回戦で見るのはもったいないカードばかり。
中でも、日本体育大(関東2位)と拓殖大(関東5位)の対戦は好ゲームが展開されました。前半優位に立った日体が4Qでわずか5得点に抑え込まれ、拓大の逆転勝利。これで日体は昨年に続き2回戦敗退、今年もオールジャパン出場権を逃しました。
今年から采配を振るう若き女性指揮官・青木綾乃コーチにとっては何ともほろ苦い結果となってしまいましたが、それでもリーグ戦で見せた破竹の12連勝は誇るべきもの。古豪復活へ向け、来季はインカレでも躍進を期待したいところです。
続いて15日は、男子準々決勝の会場・代々木第2体育館へ。大方の予想通りベスト8は今年も関東が占め、しかも来季1部で戦う8校が勝ち上がってきました。
したがってこの日もどこが勝ってもおかしくない激戦が予想されましたが、この日一番観客を沸かせたのはやはり第3試合の慶應義塾大(関東7位)―東海大(関東2位)でした。
その理由は、多少なりとも日本のバスケに詳しい方なら対戦カードを見るだけでわかるでしょう。そう、ナショナルチームでも活躍している竹内公輔(慶應)・譲次(東海大)のツインズ対決なのです。
リーグ戦では両校の対戦日がナショナルチームの活動期間と重なってしまったため、2人のマッチアップは実現しませんでした。待ちに待った直接対決というわけです。
そんなわけで注目を浴びたこの試合、2人ともお互いを知らず知らず意識したのかともに序盤は動きがぎこちない感じでしたが、そんな中でも2人がルーズボールを争う場面があり、場内は大いに沸きました。
しかも、2人が弾いたルーズボールに飛びついていったのは慶應・竹内尚紀選手。竹内と竹内がボールに絡み、そこに竹内が割って入った……文字にすると全然わけがわかりません(爆)。
それはともかく、試合のほうは弟・譲次の東海大がロースコアゲームを制しました。昨年のインカレ優秀選手・公輔はベスト8止まり、譲次はその勢いのままインカレ優勝を果たし、MVPを獲得しました。兄弟で2年続けて学生日本一とは、とんでもない双子です。
そして16日は女子の準決勝。昨年の女王で、今年も優勝の最有力候補に挙げられていた筑波大(関東1位)が敗れてしまいました。
筑波を破ったのは松蔭大(関東3位)。リーグ戦で筑波に唯一の黒星をつけたとはいえ、失礼ながらサイズや実績では劣るチーム。インカレ出場も今回でまだ4回目で、筑波や日体といった伝統校と比べるとほとんど新興勢力と言っていいでしょう。そんな松蔭が、決勝でも昨年3位の鹿屋体育大を破って見事初優勝を飾りました。
この事実は、スポーツで最も大切なのはメンタリティーであるということを教えてくれます。
僕が見る限り、松蔭の選手はベンチも含め勝利への意識が強く見てとれました。決して筑波や鹿屋のほうに油断や驕りがあったとは思いませんが、「勝ちたい」という気持ちの強さは松蔭のほうが上だったと思います。
今大会MVPの関根麻衣子選手は自宅から2時間かけて通学しているそうですが、そんな中でも空いている時間を見つけては個人練習をしているそうです。小林夕紀恵監督も「恵まれない環境の中で、選手達はよく頑張っている」と言っていました。
逆境をものともしない気持ちの強さ、それさえもモチベーションにしてしまうようなタフな精神力は最大の武器になりえます。そしてそれが技術や体力の向上にもつながるのだと僕は思っています。
思えば昨年の慶應も、とても取れそうにないルーズボールに飛び込む姿が観客を味方につけました。それは間違いなく、誰よりも強く「勝ちたい」と思っている、そんな気持ちの表れに他なりません。
そんな懸命さこそが、ここ数年インカレが多くのバスケファンを惹きつけている一番の要因だという気がします。また来年、松蔭のようなチームが新たに現れることを期待せずにはいられません。