好きだなぁ、イチローの談話。 – なんトラ111

 世の中これだけ最悪の状態だ、100年に一度の不景気だ、などとすべてのマスコミが揃って言っているとあらゆるものの動きが悪くなりますな。われわれ日常の生活でも動くのもかったるくなります。でも歴史上、何時の時代をどのように見ても、すべてが悪くて良いところがひとつもないなんてことはありません。
 必ず表があれば裏があるし、損するところがあれば得するところもある。それが家庭という最小単位から国、地球規模まで広がっても同様だと思うのです。大きな視点から見ればバランスは取れているのですね。だけれど、当事者は目の前のことで精一杯ですから大変さを一生懸命に言おうとするから、それを取材するマスコミ、とくにメディアに関わる人々はおおむねネガティブな人種ですからあまり明るい面を取り上げません。そんな習慣はありませんからドツボにはまって行くのでしょう。

 そんななかで普段のうっぷんやストレス、悩みを確実に吹っ飛ばしてくれるのがスポーツです。うっぷん、ストレス、悩みなどの詰まった状態を解決するのにとる方法のひとつにお酒があります。が、お酒は吹っ飛ばしてはくれません、気が大きくなれるものを呑むのですから最後は荒れることは多いし、あくる朝には地獄が待っています。さらに反省の悩みならぬ波が襲ってきます。
 唯一の解決法と言っていいのが体を動かすこと。体をうごかすこと、その一点に集中するので一時的に日常から離れられるわけです。ボクは雑誌の編集者時代はとくにそんな時間を作るのに腐心していたことを思い出します。そうでないとリカバリーできないほどの長時間労働です。長く働きたいからではなく、それぞれの専門分野がはっきりしているため助力を求めようにも求められない現実なのです。今の言葉で言えばマンパワーがないということです。ですから……ざるを得ない、ということになる訳です。嫌いではないから続けられるということも言えますが…。ゆえに忙しいときほど運動する時間を必死になって見出そうとしました。

 運動が、体を動かすのが得意ではない人は観戦ということになろうかと思います。そこで大声を出すのも一種のスポーツ、運動です。これもいい。
今回のWBCは不景気で体が固まっていた人々を解きほぐすのに大きな効果があったのではないかと思います。人々だけではなく日本全体の雰囲気が明るくなったような気もします。
 決勝の延長10回、あの時のイチローの眼、痺れました。久しぶりにどこかで見た、de ja vu(既視感)のような気がします。そして試合後の談話も気が利いていました。
 「あの時は、神が降りてきましたね…」
 どっかで聞いた返答です。NBAファンの、マイケル・ジョーダンファンのイチローならではの言葉でしょう。かなりMJ関連の本を読んでいるとみます。
 彼のレベルだとなにかにつけ談話を求められるのが常なので、すぐパッと思いつくのでしょうね。いつも考えているから出てくるのです。ですから記者やアナウンサーがつまらない、何も考えていない質問をすると「むっと」した返答が帰ってきます。
 その世界を知らない人からすると誤解を受けそうな返答ですが、真剣に道を追い求め、その後の談話まで考えている人からすればそんな反応もしてしまうでしょう。
良く質問されるスポーツ選手の返答にあるのがまず、「そうですね。」というのを枕につける人が多いのです。毎回、毎回、質問されるたびにです。
 少しは聞く者の身にもなって欲しいと思うことも多々あります。これはインタビューアーにではなく、その後ろに控えている映像を視る視聴者の身ということです。
 ですから、イチローの談話はボクを飽きさせないし、好きなんです。
 前回のWBC、今回のWBCと、MLBでプレイしている時とは違う弾(はじ)けたイチローを見ているとますますそう思う自分がいます。

 それでは次回の“なんトラ”までSEE YOU!


東京-福井、往復12,000円 – なんトラ110

 さてさて、前回の109号では40年前に挫折した書籍へのリベンジに関したものをお伝えしましたが、今回もそのようなお話でございます。ですが今回は同じ40年でも、40年振りの友との再会でございました。
 ことの始まりは昨年の9月の仙台での“定禅寺通りジャズフェスティバル”に行くときの話でした。大げさに言えば取材とも言えますが半分以上は興味と遊び感覚の旅ですから足代としての出費はおさえようと考えていました。そうしましたところ、仙台在住の友人S君が申すには「“大人の休日倶楽部”という仕組みがJR東日本にはあって、日時さえ合えばかなり安く来れるよ」ということでした。
調べてみたところ残念ながら合わなかったので使えませんでしたが、かなり有用だということが判明しました。そこで、使える期間に一度“おじさん二人旅”を計画しようということになったのです。年賀状には短く“真冬に福井で蟹を喰う”日時はおって…、と書いてありました。
福井にはS君と同じ部で体育会の同期、同学部の友人が住んでいるから会いに行こう、ついでに新潟にもやはりいるから会っておこう、ってな所です。

そして、実行しました。2月15日から17日までの2泊3日、日曜から火曜の3日間で時間の余裕のある人しか取れない行程です。私は東京駅、友人S君は仙台からの新幹線で大宮から同じ電車に合流することになりました。そして、長野経由で福井に向かいます。長野では牛ならぬ友、そしてさらに蕎麦に魅かれて“善光寺参り”としゃれ、参道の近くの喜多平という文久元(1861)年創業の老舗で半ざる、半かけをたぐりながら二人して美味い蕎麦に出会え、今日も酒が美味く呑めることに感謝しつつ呑み、かつたぐったのでございます。
真冬の長野でありましたが4月上旬の暖かさで、完全防寒装備の二人はうだっておりましたな。2時間20分ほどの長野滞在の後、すぐに直江津行き妙高5号、直江津から特急北越6号で富山を通って金沢へ、金沢から特急しらさぎ14号で福井へという行程は何事もなく無事到着ということになったのでございます。
途中、雪の妙高山を左手に見ながら、私が用意した井上雄彦大先生直伝の焼酎先割り2000ccを友としみじみとやりつつ、昔話をしつつ、文庫本を読みつつ、レールの継ぎ目の振動の快さに体をに感じ、うとうとしつつ向かったのでした。こんな、これ以上のシチュエイションはないというような感じの時にはあっという間に到着してしまうものでありました。
福井駅には40年ぶりに会う友人が迎えに来てくれる手はずになっていました。しかし、改札口を注視していたけれど全然分からん、当然のことですが…。隣のS君が「おう、久しぶり!」と言うまであちこちをキョロキョロしていました。ですがホテルにチェックインするまでの5分くらいの間で映画の“Back to the future”の如く40年前のイメージが戻ってきたのです。不思議なものです、僅か5分ほどで40年間というギャップが埋まってしまうのですから…。あくる日には名古屋から同期の友を呼んでくれておりました。こちらも5分です。
さて、地元に住んでいる友人を訪ねる旅の一番良いところは見るべきところ、食べておくべきところを考える必要のないところです。もちろん、そんなところに興味のない人の場合には調べておかねばなりませんが、福井のA君は問題なく見事でした。冬の日本海の幸と風景を堪能させてくれました。蟹、おろし蕎麦、永平寺、兼六園と言うことなしです。本当にご馳走様の旅でした。彼が東京に来るときにお返しをする場所を今から吟味しておかねばいけませんね。
帰りに新潟に寄って夜9時前には自宅着という行程で交通費は締めて12,000円。これが“大人の休日倶楽部”利点です。フルに利用させてもらいました。福井まで東京から、いや仙台から片道6,000円、A君が「うそだろ!いいかげんにしろよ」とぼやくのも理解できるお値段です。
今まで時間的にキュウキュウしている旅ばかりでしたが、こんな余裕のトライをしてみました。JR西日本にも同様なものがあるようですね。どうもこれも癖になりそうです。
それでは次回の“なんトラ”までSEE YOU!