「なんか、あっという間でしたねぇ」
こう語ったのはヒステリアメンバーのカメラマン・中村斗音さん。東京アパッチの公開練習を見学しに行って、専属カメラマンをしている中村さんとお会いした際の一言です。
まさにその通りでした。4月30日のファイナルからほぼ半年。よく考えれば結構な時間ですが、その間トライアウトやドラフト会議、さらにはドラフト外選手や外国人との契約、各チームの海外遠征、プレシーズンマッチ、エクスパンション等bjリーグの話題には事欠きませんでした。 しかしそれらはあくまでもオフの楽しみ。料理で言えば食材や調味料みたいなものです。いよいよ始まるシーズンこそが一番の楽しみ、いわば調理されてテーブルに出てきたメインディッシュです。あっという間だったとはいえいいかげん腹が減ってしょうがなかったので、当然のように開幕戦から味わうことにしました。

11月4・5日の開幕カードは所沢での埼玉‐富山と有明での東京‐大阪。今シーズンのスケジュールを見てみると、埼玉のホームゲームと東京のホームゲームは結構日程がかぶってますね。どちらかが遠征に出ている間にもう一方がホームゲームをやるほうが個人的にはありがたいんですが、体育館の確保の問題もあるから仕方ないんでしょうかね。それにしてもかぶりまくりな気がしますが。
まぁそんなことを言っててもしょうがないので、とりあえず4日は所沢、5日は有明に行くことにしました。エクスパンションチームの富山がどういうチームになっているのかという点と、ビッグマン石橋貴俊やLegend出身のbjリーガー・武井修志(ST)をまずは見てみたいと思ったわけです。
所沢市民体育館についたのは試合開始40分ほど前。場内では既に開幕セレモニーも始まっていて、なかなか良い雰囲気。チーム結成10年ということでスクリーンにはJBL時代の懐かしい映像も流され、この日を待ち焦がれた3683人のブースターは早くもヒートアップ気味です。所沢市長の挨拶もブロンコスに対する愛着と期待がうかがえる、熱い言葉でした。
そして試合開始。スターターは富山がドラフトNo.1ピックのルーキー呉屋貴教、根間洋一に外国人3人という布陣。呉屋と根間は沖縄出身で、一見外国人オンザコート5に見えます(笑)。一方ホームの埼玉は安齋竜三、清水耕介、庄司和広、マーカス・トニーエル、新外国人アンドリュー・フィーリーというラインナップ。
課題だったインサイドが補強され、プレシーズンも好成績だった埼玉ですが、試合は富山ペース。外国人3人が次々に得点を決めていきます。特にジェロッド・ワードが内外角に活躍し、来日してまだ2週間とは思えない働きぶりです。埼玉も内外角のバランスは悪くありませんが、どうも後手に回っている感じ。終始5~10点差をつけられる展開で前半を終えます。
後半も流れは富山。埼玉はフィーリーがゴール下の強さを見せますが、4Q開始直後には点差が18にまで開いてしまいます。残り2分頃からようやく追い上げ態勢に入るものの、この時既に庄司と清水太志郎が不可解なジャッジ連発でファウルアウト。最終的には102‐88で富山が参戦初ゲームを勝利で飾りました。
この日見た限りでは、富山の外国人はなかなかいいかも。ただし「個人技に関しては」という注釈つきです。また、この日の102点は全てスターターによるもの。ベンチメンバーでは野尻晴一と米本聡が悪くなかったという程度で、今後は控えの成長は急務でしょう。ちなみに武井はわずか3分の出場。ま、シーズンはこれからですよ。
埼玉はというと、こちらもチームとして組織立ったプレイがまだ少ないように感じられましたね。それと、フィーリーのポストプレイというオプションが加わったのは好材料ですが、昨シーズン得点ランク2位のトニーエルの存在感が少し薄くなっている気がします。この試合だけの話だったら良いんですけどね。

日付変わって5日は有明へ。前日はなんと9000人を超える大観衆だったということですが、思えば1年前も初日に3700人を集めながら翌日は2000人を切っており、正直なところ今年もまた2日目は少ないのかなと思っていました。
しかし今年は違った! この日の観客数は6401人。さすがに前日よりは減っていますが、それでも昨シーズンファイナルに次ぐリーグ歴代3位の数字です。東京は元プロ野球選手・東尾修氏の社長就任で話題になりましたが、もしかしてこれって東尾効果ってヤツですか?
あとは選手達が良いゲームをして、この日来てくれた人達がリピーターになってくれれば万々歳というわけですが、その大観衆が狂喜乱舞する展開が待っていようとは、僕には想像できませんでした。
ゲームは序盤から東京ペース。得点源のヘリコプターことジョン・ハンフリーがエンジン全開、昨季は仙台でプレイしたマイケル・ジャクソン(同姓同名の大物ミュージシャンと誕生日も同じ)も攻守に良いプレイを見せます。それに加えてこの日は青木勇人が大爆発!! 外角シュートがことごとく決まり、前半だけで18得点。チームも前半で19点リードします。
3Qは一進一退の攻防で進み、東京が20点リード。このまま東京の快勝と思った人がほとんどだったでしょう。ところがどっこい、大阪はここからマット・ロティックが3ポイントを連発して追い上げます。点差が開いたことでかえって開き直ったのか、思い切りよく打っていました。その合間にジェフ・ニュートンがフリースローで着実に加点、みるみるうちに点差が詰まります。
対照的に東京はシュートが良いタイミングで打てません。3Qまで大活躍の青木勇人もこのQは苦しいシュートを打たされる形。東京は昨シーズンの開幕戦も後半のスタミナ切れで追いつかれ、プレイオフでも前半は粘りながら後半新潟に突き放されています。その悪夢が甦るかのごとく、ディフェンスの脚が止まってしまいました。
館内に歓声と悲鳴が入り交じる中、残り3分余り、ロティックの3ポイントでついに逆転!! 実にこの間、東京はまさかの無得点。逆に5点差を許し、残り2分を切ろうかというところからようやく追いすがっていきます。残り1分からファウルゲームを仕掛けると、これが半ば成功した形で少しずつ点差が縮まり……ここからがどんでん返し。
残り5秒でニュートンに2投を沈められ5点差、これで万事休す……かと思いきや、東京のタイムアウト後ハンフリーの3ポイントに対して石橋晴行がファウル。これを3投とも決めた後、大阪のスローイン時に城宝匡史がオフェンスファウル! 大阪タイムアウトの後、東京は仲摩純平が3ポイントを打ちますがこれをロティックがチェック、ボールは大きくそれてしまいます。
さすがにもうダメだと思ったら、ゴール下に飛び込んでいた勝又英樹がタップで押し込み同点!! 実は時間切れだったような感じもしましたが(爆)、大歓声でブザーも聞こえなかったので確信はなし。ともかく審判の判定はカウントということで延長戦突入です。
延長戦も一進一退、しかし既に3人がファウルアウトしていた東京はジャクソンもファウルアウト、同点の残り29秒でハンフリーまでファウルアウトしてしまいオール日本人に。最後はロティックがオフェンスリバウンドを押し込み、98‐100で大阪の大逆転勝利となりました。それにしても、有明を2日目にしたのは結果的に正解でしたね。すごいゲームでした。

残る2カードは新潟があと一歩で全員得点・全員リバウンド・全員アシストのチームバスケで仙台を一蹴、大分は1戦目は終了間際の同点3ポイントで延長戦、2戦目は鈴木裕紀のブザービーターで高松に連勝と、生で見たいゲームが展開されたようです。
今シーズンも全チームのホームゲームを見て回る予定なので、「遠くてなかなか行けない」という方にも少しでもbjの雰囲気を味わっていただけるよう、できるだけレポートしていきたいと思っています。